苦手な先生

注意書き

現パロです。
長谷部先生が苦手な女の子のお話です。

私は、私のクラス担任であり学年主任でもある長谷部先生が大の苦手だ。

それは、先生が何かにつけて校則だの、規則だの、ことあるごとにいつも口うるさいからだ。特に厳しいのは時間を守ること。「5分前行動」という言葉をよく口にする。それじゃあもうその5分前が目的の時間でいいじゃないかと思ってしまうが、そんなことをしたら先生の場合さらに5分、すべての行動時間が早まってしまいかねない。とにかく、先生が言うには5分前行動というのは社会の常識らしい。

ところで、私は怒られるのがとても嫌いだ。怒られることが嫌、というより、怒っている人が怖くて時折泣きそうになる自分がとても嫌いだ。

なので、小さい頃から親や先生の言いつけはしっかり守る子だった。私の記憶では元からこうだった訳ではない。たまに魔がさして友達とちょっとしたいたずらをしては、なぜか自分だけが怒られるということを繰り返すうちに自然とこうなっていった。

だから、言いつけや約束ごとは守るけれど、根が真面目という訳ではないのだと思う。

***

先生や先輩、他の生徒に怒られないように日々気をつけながら過ごしていた訳だが、ある日私はやらかしてしまった。

私の学校では、1日の最後の授業が終わったら学年全員で校内の掃除をすることになっている。校内清掃が終わった後、各学級にて終礼がありその後下校、というのが1日の流れだった。

その日も早急に掃除を終わらせ、いつものように他のクラスの友達と廊下で話し込んでいたら、友達のクラス担任が職員室から教室へ終礼にやってきた。友達と別れを告げそろそろ自分も自身の教室へ戻るかと足を向けたとき、教室の違和感に気づいた。

やば……終礼終わってる……。

さらに運の悪いことに長谷部先生はまだ教室にいるようだった。

職員室からの各クラス担任の動きはチェックしていたはずだったのに。今日はツイていない。

絶対怒られる……と思い、うつむきながら教室へ入る私。

長谷部先生は教卓でクラス名簿か何かをチェックしているようだった。

うつむいていたら鼻水まで垂れてきた。鼻炎持ちのツラいところだ。すんっと鼻をすする。

長谷部先生は私が教室に入ってきたことに気づき、持っていた名簿から顔を上げる。

「何かあったのか?」

名簿を閉じながら私に訊く。

怒られるのいやだな。穏便に済ませられる最適解は何だろう。

「何でもないです」

ああ、だめだ。ロクな言い訳が見つからない。長谷部先生も黙ってるし。

絶対怒られる。

たっぷりと間をとって、ようやく先生が口を開く。

「何でもないって……お前、泣いてるじゃないか!」

先生が急に声を荒らげる。そしてその返答は私をとても混乱させた。

えっ?今なんて?

「何か悩んでいるのか?」

混乱してる私なんてそっちのけで先生が続ける。

おっと、話がとんでもない方向に行きそうだ。

「いえ……、大丈夫です」

「大丈夫なわけないだろう?!そんなに泣いて……」

あー……これは泣いていないといけない気がしてきた……。

まさか長谷部先生がただの鼻炎を泣いているのと勘違いするなんて。

「本当に大丈夫なんです。何でもないんです」

うつむき鼻をすすりながら、泣いていないことがどうかバレませんように、と祈りながら私は何とか答える。

「本当だな?!何かあったらいつでも相談するんだぞ?!」

長谷部先生は本気で私を心配しているようだ。だんだん先生が気の毒になってきた。

「はい、ありがとうございます……」

私の返答に満足したのか、長谷部先生は職員室へと去っていった。

あーびっくりした。いつものように教室に戻ったら終礼が終わってたのもびっくりしたが、それ以上に長谷部先生の勘違いの衝撃が何倍もすごかった。この短時間でとても疲れた気がする。

でも、いつも厳しくて苦手だと思っていた長谷部先生がとても生徒思いの良い先生だということを身をもって知ることができた。

これからはもう少し先生のことが好きになれそうだ。

あとがき

最後までお読みいただきありがとうございます。
私が中学生の時の実体験が元になっています。
先生とは恋に発展……するわけもなく。
S先生お元気かしら……。